第1話  お歯黒

日本には「黒の化粧文化」ともいえる時代がありました。
その代表的な例が、歯を黒く染めるお歯黒です。
聖徳太子もお歯黒をやっていました。
平安時代には女性が成人した印としておこなわれました。
男性にも広がり、武士が台頭すると、高貴な者の証となりました。
明治のころまで約一千年もの間つづきました。
常に黒々としたお歯黒を保つことは美人の証でした。
今から見れば美意識の判断としては争いのあるお歯黒も、
歯の健康にとってはたいへんよかったようで、
お歯黒は虫歯の予防効果がありました。
お歯黒の成分であるタンニンは歯質タンパクを収れんさせて
腐敗を防止し、虫歯を予防していたと考えられています。


第2話  歯ブラシの起源

古今東西、歯にまつわる言い伝えや記述はいろいろな形で残されています。
古代エジプトでは木の枝で歯を磨きました。
また、エジプトのパピルスにはすでに練り歯みがきの処方について記述がありました。
インドでもあのお釈迦様が「朝はやく起き、虫食いのない木を使って歯をみがきなさい」
と啓蒙していました。
ところで、「歯をみがく」という考え方は仏教の伝来とともに日本に輸入されたそうです。
6世紀の中頃に輸入された仏教が、やがて平安朝のころになると
加治祈祷の儀式で人心を得た密教にも発展、
その儀式のなかに楊枝の儀式というものがあって、
それが民間への歯みがき奨励に大きな役割を果たしたと伝えられています。
江戸時代には一般庶民に広く普及し、楊枝は全盛期を迎えます。
明治初期、クジラ楊枝に変わりました。
明治末期頃、やっと歯ブラシと呼ばれるようになりました。
明治29年にライオンから販売された「ばんざい歯ブラシ」が
歯ブラシという呼び方のされた始まりです。
このように、歯みがきは時代を超え、民族を超えてその大切さが伝えられてきたようです。


第3話  歯磨き剤の起源

古代ローマ帝国の貴族たちは、つまようじで歯の掃除をしていたと記録されています。
また、バラを粉末にした歯みがきや、鹿の角、ハツカネズミの頭骨からとれる灰、
馬のひずめをつかった薬などで歯のケアをしていたようです。
同じ貴族でも皇帝や皇后など皇室のトップクラスは塩を歯みがき剤として使っていました。
なにしろ、当時は塩一握り毛皮一枚といわれたほど高価で貴重な物質でしたから。
初代ローマ帝国皇帝オクタヴィアヌスのお姉さんが愛用していた
塩ハミガキ剤の処方が今も残っています。
古代ローマ人にとって、塩はみがきはあこがれのデンタル・ケアだったのでしょう。日
本で歯みがき剤が使用されたのは552年。
仏教の伝来と共に中国から「楊枝」と共に、塩で磨くことも伝えられたようです。
チューブ入り練り歯磨きは明治44年、ライオンが発売してからです。


第4話  抜けた歯はどうするの?

抜けた乳歯をどうするか。
国ごとにさまざまな言い伝えや習慣があります。
日本を含めアジアでは、上の歯は縁の下に、
下の歯は屋根へ放り投げるという習慣があります。
新しい歯は、古い歯がある方向に伸びると信じられているからです。
一方、米国、カナダ、イギリスなどでは夜眠る時、枕の下に抜けた歯を入れておくと、
"歯の妖精"がやってきて、抜けた歯を持っていき、
コインと交換してくれるという言い伝えがあるとか。
メキシコやフランス、スペインなどでは枕の下に入れた歯は、
チビねずみが持って行って代わりにプレゼントを置いていってくれるそうです。
チリとコスタリカは、かなりユニーク。
抜けた歯をイヤリングにして身につけておくそうですよ。
国がちがっても、歯の健康を願う気持ちは世界共通なんでしょうね。


第5話  目には目を、歯には歯を

有名なハムラビ法典の言葉に「目には目を、歯には歯を」があります。
これを英語では"An eye for an eye, a tooth for a tooth."といいます。
意味は"Take revenge by the same method as the damaged method"です。
他にも英語で歯にまつわるおもしろい表現が
いろいろありますのでいくつかあげてみましょう。
"Tooth and nail"、直訳すれば「歯と爪」ですが、
これで「力一杯」という意味になります。
日本語にも「歯をくいしばる」という言い方がありますが、
爪を立て、歯を噛みしめることは洋の東西を問わず、
体に力をみなぎらせるという意味になります。
"Pull teeth"を直訳すると「歯を引き抜く」ですが、これは「武器を奪う」、
つまり「骨抜きにしてしまう」という意味に転じます。
では、歯がなくなったら?"Toothless"「歯がない」、つまり「非力」。
そうならないためには"To the teeth"、
直訳すれば「歯に至るまで」、つまり「完璧に」ということです。

お口の健康は完璧に。


第6話  入れ歯の起源

紀元前2500年頃に古代エジプトで使われていた、義歯らしきものが発掘されました。
また、古代ギリシャ時代に使われていた、金線や補助的に金の帯状の板で
固定したブリッジ様の物が発掘されています。

古代ローマでは象牙と獣骨で作った義歯があったようです。
中国では、宋・明の時代に義歯様の物がありました。

日本では弥生時代に緑色蝋石製の義歯がありました。現存する最も古い
義歯は、和歌山市成願寺の尼僧(1538年没)の木床一木造りの上顎
総義歯です。この木床義歯は仏師の製作によると言われています。

ヨーロッパでは1728年近代歯科医学の祖ともいわれたフォシャ−ルは
「外科歯科医」に総義歯の製作法を記述しています。

アメリカでジョージ・ワシントンは1798年に金製の入れ歯を入れたそうです。
また、ガルデットは1800年頃金属板応用の入れ歯を作りました。

1851年頃弾性ゴムが開発され、アメリカ人エバンスはゴム床義歯を考案しました。
1937年ドイツでアクリル系樹脂による義歯が開発されました。
1907年ロスト・ワックス法が開発され金属による義歯床が作れるように
なりました。

人間の噛むことへのこだわりは大昔からあり、その中でも入れ歯はとても歴史の
ある補助具なのです。

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